札幌市営地下鉄で使われるきっぷ・乗継券・定期券・カード・敬老優待乗車証について説明します。
乗車券は、どの鉄道事業者においても当たり前のように利用されています。 ですが、札幌市交通局の場合は乗継割引が適用された乗継券を導入したり、現在の札幌在住者が頻繁に使うであろうウィズユーカードやドニチカキップ等の乗車券類も展開しています。 ここからは、札幌市営地下鉄の乗車券に関する概要を、歴史的な経緯を交えながら説明します。
札幌市営地下鉄は、日本で第3番目に自動改札機を導入し、日本で始めて全駅一斉に自動改札機を導入したことで有名です。 そんな札幌市営地下鉄ですが、乗車券に関しては、最初は「きっぷ」と「定期券」しかありませんでした(定期券のみ、バス・市電に乗継できる乗継定期券を発行していたようです)。 しかし、開業から約2年後の1973(昭和48)年10月に「乗継券」と呼ばれる乗車券が登場し、定期券を利用していない人でも、旧市営バス・市電に乗継料金で乗継できるようになりました。 (ちなみに、民間のバスに乗り継ぎできるようになったのは、1982(昭和57)年3月からのようです。)
さらに、1975(昭和50)年 1月から、70歳以上の方々にバス・市電の無料化が実施されましたが、1976(昭和51)年 1月、地下鉄も同様に無料化されることになりました。 これが敬老パス、現在の敬老優待乗車証の発祥となります。 また、1984(昭和59)年 6月から、1日乗車券の販売を開始いたしました。
1992(平成4)年11月、地下鉄専用の「ウィズユーカード」が登場しました(プレミアなし・名称は公募で決定)。 これが札幌市営地下鉄に登場した最初のカードで、当初は「券売機にカードを挿入してきっぷを購入し、そのきっぷで改札を通る」という感じで使っていました。
そのウィズユーカードですが、1994(平成6)年 6月から改札に直接通せるようになり、ストアードフェアシステム対応のカードとなりました[1.]。 さらに、同年10月の東豊線延伸時、市営交通(地下鉄・旧市営バス・市電)だけでなく、一部の民間バスの路線にも対応した「共通乗車カード」が登場しました。 元々「ウィズユーカード」と「共通乗車カード」は別物で、1995(平成7)年 4月に現在と同様のプレミア額[2.]が付いたウィズユーカードが販売されるようになりました(共通乗車カードの方は、プレミアは付いていませんでした)。 その後、1997(平成9)年 4月からウィズユーカードと共通乗車カードを統合した「共通ウィズユーカード」が販売されました(プレミアは共通ウィズユーカードに引き継がれました)。
その後、ウィズユーカード(以下、断りがない限り、ウィズユーカードは「共通ウィズユーカード」のことを指します)は飛ぶように売れ[3.]、現在も日常的に使われるカードとして広く浸透いたしました。 また、2004年10月 1日(金)から「ドニチカキップ」(土・日・祝日に使える一日乗車券)が500円で販売されるようになり[4.]、土日や祝日に地下鉄を利用しやすくなりました。 このドニチカキップは発売開始当初から売れ行きは好調で、少なくとも2009年 2月までにはドニチカキップの累計発行枚数が1,000万枚を突破したようです[5.]。
しかし、ウィズユーカードの発行枚数が伸びる一方、カードの廃棄量も次第に多くなりました(各駅の券売機や精算機付近に、使用済みのカードを入れるケースがあります)。 さらに、年々定期券の利用者が減少しています[1.]。 その理由の1つとして、土日に通勤しない場合等で、10,000円のウィズユーカードを使った方が定期料金より安い場合がある[2.]ということが挙げられるかもしれません。
札幌市交通局では、2009年 1月30日(金)から札幌市営地下鉄にICカード乗車券「SAPICA」(サピカ)が導入されました。 このSAPICAの名称は名称候補の中から札幌市民の公募によって選ばれ(http://www.city.sapporo.jp/st/icname/icname.html / リンク切れ)、「サッと取り出して、ピッと利用できるSapporo(さっぽろ)のICカード」という文章に由来しています(少々強引な気もしますが.....)。 元々札幌市交通局では、S.M.A.Pカードと呼ばれるICカードを用いてICカードに関する実証実験を行っていましたが、ついに本格的にICカードが導入されることになりました。 そのため、2007(平成19)年11月 8日(木)に札幌市、ジェイ・アール北海道バス、じょうてつ、北海道中央バスの4者で構成する「札幌ICカード協議会」を設立しました。
本来は、ウィズユーカードと同様に札幌市内の民間バスでも共通利用できるようにするだけでなく、JR北海道が2008年10月25日(土)に運用を開始したICカード「Kitaca(キタカ)」と共通利用できる予定でした。 そのため、札幌市とJR北海道との間で話し合いが持たれましたが、Kitaca(JR東日本のSuicaに順序したシステム)に札幌独自機能(ウィズユーカードのプレミアや図書館の貸し出し券機能など)をつけるのは難しい等の理由により、導入開始時のKitacaとSAPICAとの相互利用は断念されました。 バス・市電におけるICカードの利用に関しても導入開始当初は利用できず、結局最初は札幌市営地下鉄のみ対応となるようです。
2008年 2月から随時改札機の改造が行われており(改札機の写真はGASSYさん提供のもので、2008年 8月 8日にぷらさーず(R.S.のブログ)で掲載したものと同じです)、S.M.A.P.カードの頃とは異なるICカードリーダーの設置が開始されました。 これは、バーありの改札機(恐らく日本信号のGX-5)・バーなしの新型改札機(恐らく日本信号のGX-7)共に改造して設置されています。 その後、同年 8月から一部の駅のICカードリーダーが稼働を開始しました(ただし、これはモニター向けだと思われます)。 現在、SAPICA対応改札機はピンク色のシールが貼られており、SAPICAに対応しているかどうかを容易に区別することができます。
(左 : 更新された新型券売機+更新前の新型券売機[学園前駅北改札口側] 右 : チャージ機能が追加された精算機[宮の沢駅])
改札機のみならず、現在は券売機や精算機の新規導入や配置転換も札幌市営地下鉄各駅で進められています。 こちらも2008年 8月頃から更新が始まり、当初は最新型のタッチパネル式券売機(恐らく日本信号のMX-7)のみ左の写真に示すような感じで新規導入され始めました(SAPICAに対応しているだけでなく、SAPICA定期券や領収書も発行できるようになりました)。 なお、既存のタッチパネル式券売機(恐らく日本信号のSX-7)はICカードに対応しているようですが、定期券には対応しない(というより、機種側で対応できない)ものと思われます。 また、最新型の精算機(恐らく日本信号のAX-7)もICカードに対応しているようです。 9月に入ってからは宮の沢延伸時に設置されたプラズマディスプレイの傾斜型券売機・精算機(機種名不明)に関しても更新が進められており、券売機・精算機ともに右の写真に示すような感じのSAPICAのチャージが行える装置の設置が進んでいます。
2009(平成21)~2011(平成23)年度にかけて、引き続き券売機・改札機・精算機の更新を行っていきましたが、この段階ではまだ、ウィズユーカードのみに対応した機器類が多く残存している状況でした。 2015年 3月末のウィズユーカード利用停止以降、先にVI型までの券売機・精算機とICカードリーダーが設置されていない改札機がVIII型の機種(MX-7, GX-7, AX-7)に置換されました。 S.M.A.P.カード用のICカードリーダーが設定されていた改札機はSAPICAが読み取れるよう改造が行われましたが、結局2019年度にGX-8と思われる機種に置換されました。 2019年度については、VII型(傾斜型、後年にSAPICAリーダーが追設された機種)の券売機・精算機も最新機種(MX-8, AX-8)に置換されました。
従って、2020年5月現在は、券売機・改札機・精算機いずれも日本信号製の類似機種で ほぼ統一されています。 (「ほぼ」としたのは、ICカードチャージ機はレシップ社製のものが用いられている為。)
ウィズユーカードは券売機に挿入することで、同一金額の現金を投入したかのように取り扱うことが可能でした。 (…というか、これがウィズユーカードの登場当初(改札機直接投入対応前)の使い方です。)
つまり、残額が初乗り運賃以下の半端となったウィズユーカードを投入してからきっぷを買うことで、残高を余すことなく利用できました。 ただし、ウィズユーカードの残額が一部でも反映されている状態で、きっぷ以外の乗車券(ウィズユーカードや1DAYカード、ドニチカキップなど)を買うことはできませんでした。
SAPICAについても、同じように券売機にカードを挿入した状態で、SAPICAの残高を利用してきっぷを購入することは可能です。 ただし、SAPICAが地下鉄のみ対応だった頃に乗り継ぐのは、この方法しかありませんでしたが(バス・市電側がSAPICA非対応だったので、乗継券を購入することで乗継料金を適用できた)、 現在はSAPICAだけで乗継することも可能となっていますので、ほぼ使うことはない操作だと考えられます。